①ビゼー:序曲『祖国』(モノラル)
デジレ・デフォー(指揮)
録音:1947年1月22日 シカゴ、オーケストラ・ホール

②ドビュッシー:6つの古代墓碑銘(アンセルメによる管弦楽版)(ステレオ)
エルネスト・アンセルメ(指揮)
録音:1968年1月25,26日 シカゴ、オーケストラ・ホール

③ドビュッシー/ラインスドルフ編:歌劇『ペレアスとメリザンド』より前奏曲と間奏曲(ステレオ)
エーリヒ・ラインスドルフ(指揮)
録音:1986年11月26,29日 シカゴ、オーケストラ・ホール

④コープランド:バレエ音楽『ビリー・ザ・キッド』組曲(ステレオ)
ジェイムス・レヴァイン(指揮)
録音:1981年7月4日 ラヴィニア音楽祭、シカゴ北部郊外、パヴィリオン(野外音楽場)

 三回目はDISC8。ここではフランス音楽中心の収録。ビゼーのみが古く、モノラル。しかし、どれもこのオケのアンサンブルは堪能できる。一番新しいレヴァインはさすがに鮮度もあって、聴きやすい。当時、この組み合わせでいくつかの録音がDGからリリースされていたが、コープランドはあったのだろうか。組曲ながら溌剌としたところはいい。ただ、この指揮者は太りすぎて最後は体調崩して引退してしまった。その後も「Me Too」運動の一環か、セクシャルハラスメントが露見して、名誉も失ってしまったのは残念である。

 ドビュッシーは両曲ともに指揮者による編曲や編集されたものを演奏している。収録年代を見るとアンセルメは手兵を率いて来日した年であり、死の前年である。一方、ラインスドルフはボストン交響楽団を締め上げすぎて、却って生気を喪失させてしまったという人。この当時はフリーランスでいろいろなオケを指揮していた時代のようだ。この当時、代役でNYPの日本公演を振ったこともある。

 収録年月日を見て、その当時のことを思いを馳せるのも面白い。

①モーツァルト/ブゾーニ編:『後宮からの誘拐』 K.384~序曲(ステレオ)
ダニエル・バレンボイム(指揮)
録音:1996年2月8日 シカゴ、オーケストラ・ホール

②モーツァルト:ディヴェルティメント第11番ニ長調 K.251より(第1,2,3,5楽章)(ステレオ)
レイ・スティル(オーボエ)
カルロ・マリア・ジュリーニ(指揮)
録音:1967年3月2,3日 シカゴ、オーケストラ・ホール

③ベートーヴェン:オリーヴ山上のキリスト op.85(ステレオ)
ローラ・エイキン(ソプラノ)
ベン・ヘップナー(テノール)
ルネ・パーペ(バス)
シカゴ交響楽団合唱団(ドゥエイン・ウォルフェ:合唱指揮)
ダニエル・バレンボイム(指揮)
録音:1996年2月15,16日 シカゴ、オーケストラ・ホール

 これはDISC10の内容。順番は思いつきである。比較的苦手な古典派の作品ばかり収録されたものを先に聴いてみることとした。最初のものはとにかく古い録音があったので、心配だったからだが、こちらは割と新しい録音であり、全てステレオ収録になっている。

 最初の序曲だが、オペラ上演の時は、そのままアタッカで劇中に突入する。したがって、演奏会用に終止が作られているが、ブゾーニ編曲とあるのは通常の版ではなく、ブゾーニが作った終止ということらしい。後宮はご存知のようにハーレムである。少し背徳な雰囲気のある演目。大太鼓やシンバル、トライアングルなんかがモーツァルトには珍しく使われているのはトルコが舞台だからだろうか。

 ②のジュリーニよるディヴェルティメントは抜粋なのが少し残念だが、こうして適宜選択して演奏するのが常なのかもしれない。これはBGMとしては誠にいい音楽。

 しかし、このディスクは③が中心。あまり演奏頻度は高くないが、第9番や荘厳ミザ曲に先立つ、カンタータでほぼこれらの楽器編成と同じようである。ネットでスコアやパート譜を検索できる。約60分ほどかかる大作である。もっと演奏されていい作品。バレンボイムは是非取り上げるべきということで演奏されたようだ。この当時、既に放送局は放送しておらず、これも特殊な音源のようである。

①ワーグナー:『歌の殿堂を讃えよう(Hail, Bright Abode)』~『タンホイザー』第2幕より(モノラル)
フレデリック・ストック(指揮)、フェスティヴァル・コーラス(Festival Chorus)
録音:1933年5月27日 シカゴ、万国博覧会サイエンス・コート・ホール

②ベートーヴェン:交響曲第1番ハ長調 op.21(モノラル)
フリッツ・ブッシュ(指揮)
録音:1949年2月3日 シカゴ、オーケストラ・ホール

③シューベルト:交響曲第8番ロ短調 D.759『未完成』(モノラル)
ブルーノ・ワルター(指揮)
録音:1958年3月13日 シカゴ、オーケストラ・ホール

④シューマン:マンフレッド序曲 op.115(モノラル)
ブルーノ・ワルター(指揮)
録音:1956年2月1日 WGN-TV Studios

⑤ ラモー:ダルダニュス組曲(ヴァンサン・ダンディ版)(モノラル)
シャルル・ミュンシュ(指揮)
録音:1963年2月27日 シカゴ、オーケストラ・ホール

 まず、巻頭1枚目から、ここには①のように82年前の録音も含まれていて、まずこの最古のものの音質が一番気がかりだった。しかし、それは杞憂で、当時としてはしっかりした音質だった。ややデッドであるし、本来その前にあるマーチの部分も聴いてみたいというないものねだりをしたくなった。資料によると、この3年前に行進曲はスタジオ録音されたようである。

 録音数の少ないフリッツ・ブッシュによるベートーヴェンの第1番も割とすっきりして貴重だが、この盤ではワルターの登場がうれしい。モノラルながら、「未完成」などやはりほれぼれする。シューマンはテレビ中継の音源のようで必ずしもいい条件での演奏ではなさそうだが、「マンフレッド」序曲は巨匠が振るものでこれが唯一。例のバーンスタインのNYPのデビューの時に組まれていたもので、その演奏会もワルターが振ることになっていたので、割と得意としていたのではなかろうか。しっかりした演奏であると思う。巷間出回っているモーツァルトのレクイエムは音が酷いと噂だが、ここではそうではないのがありがたい。

 あとはミュンシュによるラモーのダルダニュス組曲。ダンディのアレンジとある。ミュンシュは好んでいたようだが、音源資料はこれが唯一だそうだ。ステレオでないのが残念だが、比較的いい状態で聴ける。ボストン交響楽団を辞して、いろいろなオケと共演、フィラデルフィアなんかとはコロムビアにスタジオ録音も遺しているが、シカゴとはライヴのみようだ。

 1枚目からして、こんなふうに興味津々の展開で後が楽しみである。

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