成瀬監督の夫婦三部作の最後になる作品。林芙美子原作のものだが、「めし」「稲妻」「浮雲」といった名作群よりはやや地味な印象だ。上原謙と高峰三枝子と言えば、戦前の松竹作品では美男美女として何回も共演、しかもそこに高杉早苗も出演していて、1937年の「朱と緑」を彷彿させる。また、上原と高峰は国鉄のCMでナイスミドル夫婦役で出演していた。そういった新旧の印象とは全く逆の役柄である。妻は金の亡者だし、夫は優柔不断でおまけに浮気までする。妻の行動を見ると浮気の一つもしたくなるし、千年の恋も冷めてしまうように思う。この原作は読んでないが、資料によると離婚による結末らしいが、映画はそこまで至っていない。しかし夫婦関係は修復不能の状態だ。
種々の解説、NHKのBS放映時の解説も含めて、これは成瀬監督の最初の不幸な千葉早智子との結婚の体験を反映しているというのだ。