2011年10月

ヴィクトリア・ロス・アンヘレス(S:ミミ)
ルチーネ・アマラ(S:ムゼッタ)
ユッシ・ビョルリング(T:ロドルフォ)
ロバート・メリル(Br:マルチェッロ)
ジョン・リアードン(Br:ショナール)
ジョルジョ・トッツィ(B:コリーネ)
フェルデナンド・コレナ(B:ベノア、アルチンドロ)
ウィリアム・ナール(T:パピニョール)
トーマス・パウウェル(Br:税関吏)
ジョルジ・デル・モンテ(Br:税関の警官)
サー・トーマス・ビーチャム指揮 RCAビクター管弦楽団・合唱団 コロンバス少年合唱団
録音月日:1956年3月16,17,30:4月1,3,5,6日 録音場所:マンハッタン・センター、ニューヨーク 
録音方式:モノラル
 
 このアルバムはLP時代から有名なものだったが、今回初めて手に入れて聴いてみた。ビーチャム卿に少し興味を覚えたからだ。同時期にグリーグも購入して先日記事にしたばかりだが、このプッチーニの「ボエーム」も聴いてみたくなった。ディーリアスの作品の普及者としても有名で数々の楽団を設立に関わったイギリス楽壇の大立者だった卿がアメリカで録音したものだ。楽団名がレコード会社名を冠にしているのは契約の関係で実体名を出せなかったようである。これはMETのアンサンブルと言われている。また、EMIからの販売なのに何故、RCAビクターなのか。録音はRCAが担当したのであろう。この当時、RCAとEMIは提携していた。周知のように両者はニッパー犬の絵を掲げた「His Master's Voice」を商標にしていた関係だ。後にこれは解消され、RCAはDECCAと提携する。解消する時にEMIに移管したのか、ビーチャムがイギリスではEMI専属で当初からEMIに帰属していたのかではなかったかと推察している。
 
 さて、中味はアンヘレスのミミというのがまず驚くが声だけを聴いていると誠に可憐なミミである。ビョルリングのロドルフォも朗々とした美声を聴かせてくれる。メリルやコレナなどの脇役もいい。ビーチャムの指揮はトスカニーニほど厳格ではないが、やはりやや速めのテンポで爽快なものだった。このオペラは面白うてやがて哀しきという類のもの。やや筋が不明瞭なところはあるが、音楽がそれを補って余りあると思う。
 
 
 モノラルだけれどもいい状態で聴けるのもありがたい。今手許にあるのはアメリカ盤だが、UK盤もあるし、NAXOS盤もある。

 まず当事者は、自らの行為を反省すべきであろう。創業家の排除が目的と反論しているが、そのきっかけを作ったのは前会長自身だからだ。
 
 そして、もう一つのオリンパスも含めて、東証の社長が、外国投資家から、日本企業にはガバナンス能力が欠けていると激しく迫られたと語っている。もちろんこの2社で全ての日本企業を同じだと結論付けるのは無理があるし、乱暴な話だ。2社もそれぞれ状況が異なる。しかし、市場心理はこんなことでも極端に走ってしまう恐れがある。2002年に米国で起きたエンロン・ワールドコム事件を思い出してみるがいい。一部の不心得企業のためにアメリカの経済に対する不信感が拭き出たような様相だった。東証が企業統治に十分気を付けることと異例の通達を上場企業に出したのはそういう危機感の表れである。

 CHANDOS社ではリチャード・ヒコックスでホルストの管弦楽曲のシリーズを完成する計画だったのが、急逝により頓挫した形となっていた。それを継承したのがアンドルー・デイヴィスであった。だからVol.2と明示されているようである。
 
 今回のアルバムで注目したのは「日本組曲」である。この作品は日本の舞踏家・伊藤道郎の依頼と教唆によって1916年に作曲されたもの。伊藤道郎は、伊藤熹朔、千田是也の兄あたる人で、先年亡くなったジェリー伊藤はこの人の次男になる。当時ホルストは「惑星」を作曲中で、同じような響が双方の曲に聴かれる。その意味でこの組み合わせは誠に妙である。そして録音の数が何故か多くないので、貴重である。他に手許にはボールトのLyrita盤があるが、韓国の指揮者ヴィクトリア・ユンの録音もある。それくらいしか今のところカタログに載っていないからだ。
 
 各曲を聴くと日本人なら聴き覚えのあるメロディが出てくる。それもプッチーニが「蝶々夫人」で引用した以上に日本人には馴染めるものになっているのがうれしい。もっと聴かれていい曲と思った。

収録情報】
・プッチーニ:歌劇『トスカ』全曲
 トスカ:キャサリン・マルフィターノ(S)
 カヴァラドッシ:リチャード・マーギソン(T)
 スカルピア男爵:ブリン・ターフェル(Br)
 アンジェロッティ:マリオ・ルペリ(B)
 堂守:エンリコ・フィソーレ(B)
 スポレッタ:ジョン・グラハム=ホール(T)
 シャルローネ:ジョン・ヴァン・ウェルシュ(B)
 看守:トン・ケンペルマン(B)
 羊飼い:アンドレアス・ブルクハート(Boy-S)
 ネーデルランド・オペラ合唱団、ユトレヒト大聖堂少年聖歌隊
 アムステルダム・コンセルトヘボウ管弦楽団
 リッカルド・シャイー(指揮)
 演出:ニコラウス・レーンホフ
 これは1998年のネーデルランドオペラ、音楽劇場での公演ライヴ映像である。資料によると、このオペラカンパニーは常設のオーケストラは置かず、近郊のオーケストラを都度起用するのが特徴だという。したがってピットにはこの映像のようにACOが入ったり、ハーグ・フィル、ネーデルランド・フィルの他、ピリオド楽器のアンサンブルも入ったりするという。そして、年に一度ACOがピットに入るのを現地では注目して見ているという。
 
 指揮のシャイーはイタリアを始めとして、オペラを振ってきた人だが、特典映像でのインタビューではオペラは独特の気遣いがあって、終わる度に奥さんに今度が最後で余生は交響曲を指揮して暮らすよと冗談めいたことを語っていた。それだけ神経を使うのであろう。キャストを見ると主要な役柄にイタリア人がいない。アンジェロッティと堂守がイタリア人のような名前だが、悲しい哉、この二人の歌手の経歴を私は知らない。主演3人は英米の英語圏の歌手たちではある。管弦楽がACOだから、例えばスカラ座あたりの公演とは微妙ながら肌合いが違う。またアリアが終わった直後の拍手はなく、そのまま音楽が続行されるのも、イタリアあたりと異なる。バイロイトに近い感じだ。その代わり終演後は熱烈な拍手がある。演奏歌唱は誠に申し分ない。オケの低音の迫力は凄いものがある。ただし、トスカに扮したマルフィターノの容姿が衰えてやや老けた感じなのは意外であった。今まで観た中で老婆みたいに見えてしまうのはどうしたことだろう。「サロメ」の映像ではたいへん魅力的に見えたのだが。カヴァラドッシのマージソンも頭髪は薄くかなりいい体格。これもちょっと私のイメージと異なる。ターフェルのスカルピアだけ堂々として憎々しい感じが出ていて、良かった。もう一つ、第3幕での羊飼いの歌唱。あれは少年歌手がバンダで歌うのだが、朗々とした歌唱できれいな声だった。日本の公演では緊張してか少々上ずったものを聴いたことがあるが、こちらはそんな感じがなかったのは凄いと思った。最後の舞台集合では合唱団のユニフォームだろうか、衣裳ではなく普通のジャケットを着て登場した。

(収録内容)
・劇付随音楽『ペール・ギュント』より(10曲)(録音時期:1956-57年)
・交響的舞曲Op.64-2(録音時期:1959年)
・演奏会用序曲『秋に』Op.11(録音時期:1955年)
・古いノルウェーの歌による変奏曲Op.51(録音時期:1955年)
 イルゼ・ホルヴェーク(ソプラノ)
 ビーチャム合唱協会(合唱指揮:デニス・ヴォーン)
 サー・トーマス・ビーチャム指揮 ロイヤル・フィルハーモニー管弦楽団
 録音場所:ロンドン、アビー・ロード・スタジオ
 録音方式:ステレオ(セッション)
 
 これはビーチャムの晩年の録音の一つ。同時期にディーリアスの曲集もある。
 
 イギリス人はこういう北欧の音楽を得意とし、また愛好しているなと思う。このアルバムでは最初の「ペールギュント」が一番知られているが、他の曲も結構聴き応えのある作品ばかりでもっと聴かれても良いと思う。ビーチャムも手慣れたもの。20歳に初めての演奏会で指揮を執ったのもこの「ペール・ギュント」だったという。

 

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