敗戦直後の日本を活写した資料的にも貴重な映画である。戦前からのコメディアンや漫才師、落語家などが出ている喜劇だが、ややスタイルが古いので、笑えないところもあるにはある。この中で「あのね、わしゃかなわんよ」の台詞が有名な高勢実乗も出ているが、これが最晩年の姿ではなかろうか。この人は3年後には亡くなっている。戦前の日活や東宝で大いに活躍した人だった。主人公五人の中では、エンタツ&アチャコは有名な漫才コンビだった。エンタツは東映の「旗本退屈男」で円太役でレギュラーをやっていたし、アチャコは私はテレビのバラエティやドラマで知っていた人であった。石田一松はこの後、国会議員になったそうで、タレント議員第一号なのだそうだが、私はあまり馴染みがない。
しかし、普通うちひしがれた世相にこういう喜劇が製作されるというのは私には驚きである。当時の人は逞しいと思う。また、笑いで現実の憂さを晴らしていたのであろう。