作家の山崎豊子さんが亡くなった。高齢で最近の健康状態を察するに、いつかは訃報に接するのではないかと感じていたが、88歳だという。
女石川と称せられ、石川達三が扱うような題材を女性ながら、果敢に取り上げていたからだろう。時には盗作ではないかといった騒ぎもあったが、「暖簾」(川島雄三監督)、「ぼんち」(市川崑監督)、「白い巨塔」(山本薩夫監督)、「華麗なる一族」(山本薩夫監督)、「不毛地帯」(山本薩夫監督)、「沈まぬ太陽」(若松節郎監督)など映画にも取り上げられ、全て話題作でもあった。殊に山本薩夫監督には信頼を寄せていたそうだ。石川達三も山本監督が「人間の壁」「傷だらけの山河」「金環蝕」とやはり3つ取り上げているのと偶然一致する。
上記の「暖簾」や「ぼんち」は自身の体験みたいなものを小説化しているが、後期は社会的な題材が多く、読んでいても考えされたものが多かった。殊に「華麗なる一族」は金融再編成が起きることを予見したようなドラマだ。実際に今は3つのメガバンクに都市銀行は収斂したような感じで、小説の最後の方に大蔵大臣のこれからの方針のような形になっているのには驚いたものだ。
金融界のみならず、医学界、商社、航空会社などメスのいれにくいところを小説にしてくれた稀有な存在ではあった。ご冥福を祈りたい。