2015年04月

【収録情報】
● メリコフ:バレエ音楽『愛の伝説』
ワレリー・ゲルギエフ指揮 モスクワ放送交響楽団

 メリコフという作曲家は初めて知る。1933年生まれのアゼルバイジャンの人というが、音楽は誠にエチゾティックで面白い。リズムも独特でイスラムの世界のような怪しげな雰囲気もある。ゲルギエフの若い頃のもので、モスクワ放送交響楽団を指揮しているのも珍しい。いつの収録かがちょっといい加減そうで、ジャケットには1968年とあるが、これが本当ならゲルギエフは15歳ということになる。これはいくらなんでも、間違いであろう。1988年くらいではなかろうか。

 何でもこの演目はゲルギエフは来日して、演奏するそうである。バレエ・ファンにはまたとない機会であろう。

カルメン・バルスロップ(S トゥリーモニシャ)
 ベティ・アレン(Ms モニシャ)
 カーティス・レイアム(Bs レムス)
 ウィラード・ホワイト(Bs-Br ネッド)
 コーラ・ジョンソン(ルーシー)
 ケネス・ヒックス(アンディ)
 レイモンド・ベウズモア(シモン)、他
 ヒューストン・グランド・オペラ
 ガンサー・シュラー(指揮)

 録音時期:1975年10月
 録音場所:ニューヨーク、RCAスタジオ
 録音方式:ステレオ(アナログ/セッション)

 A&Rプロデューサー:トーマス・モーリー
 バランス・エンジニア:ゲルト・ヴェストホイザー
 レコーディング・エンジニア&エディティング: ギュンター・ヘルマンス
 リマスタリング:ポリヒムニア・インターナショナル
 リマスタリング:2014年8月、バールン、オランダ
>発売元のコメント
 このディスクには「ラグタイム王」と呼ばれた作曲家スコット・ジョプリンによるラグタイム・オペラ『トゥリーモニシャ』が収録されております。ジョプリンはシカゴのラグタイムのピアニスト、オーティス・ソーンダースに出会ったことで自分の作品を楽譜に書くようになり、その後演奏者としてだけでなく作曲家として、ラグタイムを土台にした作品を残しました。その音楽は、クラシック音楽の側からも高く評価されております。
 この『トゥリーモニシャ』は、終曲の美しくゆったりとした作品でジョプリンの傑作の一つに数えられます。この作品は長い間埋もれていましたが、1970年にピアノ・スコアが発見され、1972年にアンダーソンのオーケストレーションで復活蘇演され評判となりました。その後、1975年にはガンサー・シュラー指揮、ヒューストン・グランド・オペラで上演され、この演奏会は話題となりました。
 リマスタリングはPentatoneレーベルが誇るオランダのポリヒムニア・インターナショナルが担当しており、万全のリマスタリングと言えます。また、約50ページのブックレットには英語歌詞とDGのオリジナル・ジャケットが掲載されております。(キングインターナショナル)
 
 発売元のコメントにある通り、これはグラモフォンが録音したものだが、LP時代は全く気付いていなかったものである。あるいは国内盤はなかったのかもしれない。
 
 スコット・ジョプリンはラグタイムの作曲家でポピュラー・ソングが中心とばかり思っていたのに、こうしたオペラも企図していたとは驚いた。やはりラグタイムの要素を生かし、一種のミュージカルに近い作品という印象である。登場人物は殆ど黒人(アフリカ系)というのは、ガーシュインの「ポーギーとベス」と同様で、アフリカ系の作曲家の作品であるのがもっとユニークなところかもしれない。しかし、むしろこちらの方が抒情的な音楽が多いように思う。ラグタイムがベースだから、独特のリズムも味わえる。
 
 何故、自身のオーケストレーションがなかったかは英文の解説に記されているが、保管状態がよくなく手書きのオケ譜は1962年頃廃棄されてしまったようだ。また、ジョプリンのオペラには聴衆は何の興味を示さなかったので、彼は落胆してしまい、そのまま天に召されたようだ。ともあれ、ジョプリンの本来の意図に沿ったオーケストレションが施されて復活したことは、遅まきながら喜びたいと思う。
 

【曲目】
[CD1]
・チャイコフスキー: 交響曲第4番 へ短調 op.36
収録: 1988年11月2日、ロッテルダム、デ・ドーレン[NPS]
・シベリウス: 交響曲第1番 ホ短調 op.39
収録: 2003年12月13日、アムステルダム・コンセルトヘボウ[NPS AVRO TROS]
[CD2]
・プロコフィエフ: 「ロメオとジュリエット」op.64 より(全17曲)
収録: 2004年6月6日、ロッテルダム、デ・ドーレン[NPS]
・ストラヴィンスキー: 春の祭典
収録: 1996年5月31日、ロッテルダム、デ・ドーレン[NPS]
[CD3]
・ショスタコーヴィチ: 交響曲第11番 ト短調 op.103
収録: 1990年11月17日、アムステルダム・コンセルトヘボウ[VARA]
・ベルリオーズ: 「ファウストの劫罰」より「鬼火のメヌエット」「妖精の踊り」「ハンガリー行進曲」
収録: 1997年9月25日、ロッテルダム、デ・ドーレン[NPS]
[CD4]
・シュニトケ: ヴィオラ協奏曲 (ユーリ・バシュメト(va))
収録: 1993年3月13日、アムステルダム・コンセルトヘボウ[VARA]
・デュティユー: ヴァイオリン協奏曲「夢の木」 レオニダス・カヴァコス(vn)
収録: 2007年9月14日、ロッテルダム、デ・ドーレン[KRO]
・ティシチェンコ: バレエ「ヤロスラヴナ」より(全6曲)
収録: 2007年9月15日、ロッテルダム、デ・ドーレン[KRO]

【演奏】
ワレリー・ゲルギエフ(指揮) ロッテルダム・フィルハーモニー管弦楽団


 ゲルギエフのごく初期の頃から、ロッテルダム・フィルのシェフになった後のものまで、20年の軌跡を収録したもの。資料によると、普段あまり取り上げないものもあって、その意味では貴重なこの指揮者の記録になる。このBOXで目を惹いたのは、4枚目の現代曲集。これらはあまりCDのカタログにも載っていない作品であるばかりでなく、ゲルギエフが指揮したということが貴重のような気がした。ライヴの放送用音源ならではのものかもしれない。

 どちらかというとショスタコーヴィチにしろ、シュニトケにしろ、ここに収まっているものは、どこか暗く憂鬱な雰囲気ではある。年代的にソヴィエトの崩壊を挟んだ記録だが、ゲルギエフの心持を放出していたのかもしれない。

【曲目】
シューベルト:『ロザムンデ』序曲
ドヴォルザーク: チェロ協奏曲 ロ短調 Op.104*
デュティユー: メタボール

【演奏】
ピエール・フルニエ(Vc)*
セルジュ・チェリビダッケ(指揮) フランス国立放送管弦楽団

【録音】
1974年10月2日、シャンゼリゼ劇場(ライヴ)
フランス国立視聴覚研究所音源提供

 
 チェリビダッケによるドヴォルザークのチェロ協奏曲はこれで2種目になる。少し前にジャクリーヌ・デュ・プレをソリストに迎えたスウェーデン放送交響楽団の録音を持っていたからだ。協奏曲は結構、一癖も二癖もある奏者と共演している。ここでもフルニエという超一流の奏者との共演だ。マイクはソロに照準を合わせていて、管弦楽の音がやや奥に引っ込んだように聴こえるのは残念だが、奏者と指揮者率いるオーケストラとのガップリ四つの演奏は聴き応えがある。さぞかし生で聴いた人は圧倒されたのではなかろうか。その割には拍手は3曲とも共通におとなしいように感じる。これも録音の特性なのかもしれない。
 
 解説にもあったが、指揮者は練習量を要求し、ひたすら精緻な音楽を目指すが、規制に縛られるのを嫌うフランスの楽員とはソリが合わない。結局、短期間で関係は絶たれれてしまうのだが、これだけの量の録音が遺されていたのは、愛好家には喜ばしいことと思う。その音楽に賛同するか否かは別にして、ユニークな解釈が聴けるのはありがたいと思うのだ。

①シューベルト:6つの舞曲(編曲:ヴェーベルン)
②シューベルト:交響曲第5番変ロ長調D.485
③J.シュトラウスⅡ世:喜歌劇「こうもり」序曲
④J.シュトラウスⅡ世:ウィーンの森の物語
⑤J.シュトラウスⅡ世:フィガロ・ポルカ
⑥J.シュトラウスⅡ世:ピツィカート・ポルカ
⑦J.シュトラウスⅡ世:トリッチ・トラッチ・ポルカ
⑧J.シュトラウスⅡ世:皇帝円舞曲
セルジュ・チェリビダッケ指揮 フランス国立放送局管弦楽団
1973.12.30 シャンゼリゼ劇場、パリ(L)

 アルトゥスからフランス時代のチェリのライヴがいくつか、リリーズされた内の1つ。

 日付からすると、ガラ・コンサートみたいなものかもしれない。全てオーストリアの曲だが、突き放したような客観的解釈というユニークな演奏になっている。②のシューベルトの交響曲のこれほど冷たい感じの演奏は他にない。先日聴いたマゼールのものもここまで徹底はしていない。後半のシュトラウスのワルツやポルカも極めて分析的で、独特の湧きたったような楽しさなどは感じられない。拍手はたいへん熱狂的ではあるが、演奏は極めて冷静なものであった。「ウィーンの森の物語」は16分も要していて、しかも普段は聴かれない和音などが聴こえる。「こうもり」序曲も交響詩に近く、これからオペレッタが始まるというワクワク感はない。

 好みは分かれるだろうが、ここまで徹底されると脱帽である。これだから、音楽は面白い。

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