2016年04月

2003年2月23日 紀尾井ホール(ライブ録音)

早坂文雄管絃樂曲「讃頌祝典之樂」(1942)
信時潔交声曲「海道東征」(1940)
芥川也寸志NHK大河ドラマ「赤穂浪士」よりテーマ(1964)
 
ソプラノ鈴木美登里
ソプラノ野々下由香里
アルト穴澤ゆう子
テノール谷口洋介
テノール島田道生
バリトン春日保人
合唱ニッポニカ・フェスティバル・コーア
指揮本名徹次
管弦楽オーケストラ・ニッポニカ

これはオーケストラ・ニッポニカの2回目の演奏会のライヴのようである。このオケは日本人の作品を主に、
することを柱にするというユニークな団体で、これまであまり取り上げてこなかった邦人作品を取り上げて、
録音も出してくれるというたいへんありがたい存在だ。

信時潔のカンタータは先日東京藝術大学の演奏があったが、これはそれに先立つ10年以上も前の記録。多分早坂作品ともども戦後初めて演奏されたものではなかろうか。題名からして、国粋的な雰囲気漂う内容なので忌避されてきたものだろう。

 早坂の作品は1942年に初演されている。演奏は新交響楽団つまり現在のNHK交響楽団だ。指揮は山本直忠。この当時は邦人作品を必ず入れるようなことも行われていたようだが、初演の場は「第1回管弦楽優秀作品発表会」だった。周知のように早坂は映画音楽を手掛け黒澤明た溝口健二の作品などを担当した人だ。映画音楽は1939年から開始しているので、もう東宝専属として働いていた時期でもある。この時期では「左方の舞と右方の舞」という作品が有名だが、この曲もやや似たような要素があるのが面白い。

 信時作品は既に記事にした。作詩が北原白秋ながら言葉が難しい。敬遠されるのは内容もさることながら、歌詞の難しさもあるのかもしれない。やたら難解な言葉を使って権威を誇示するような傾向があったのだろうかと思ったりもする。

 最後の芥川作品は恐らくは、アンコールだろう。皮肉なことに拍手はこれが一番大きかった。聴衆にもこれが一番馴染みだったのだろう。でも演奏に参加している人でこの音楽ですら、わからない人も多かったのではなかろうか。
 
                                                                                                                                    

 ナサニエル・シルクレットという人は指揮者としては知っていたが、作曲もやっていたことそして元来はクラリネット奏者だったことはつい最近知った。そしてこの協奏曲はジャズ奏者のトミー・ドーシーのために書かれ、ドーシーの演奏で初演された。その録音が今度出るようだ。指揮者はストコフスキー。その録音の発注をしたが、もっといい状態の録音を捜したところクリスチャン・リンドベルイのものを見つけた。ただし、廃盤のようで中古の某社のマーケットプレイスで発注。やっと海の向こうから届いた。そのアルバムにはシルクレット作品の他、現代作品が2つが収録されていて、1971年のヘブベルクの協奏曲とリンドベルイの自作。正直これらは歌声も入るちょっと突飛な構成で俄かに馴染めないものがあったが、シルクレットは感じのよいムード音楽といった趣だった。1945年に発表されたもので、古き良きアメリカの雰囲気を伝えた作品と云ってよかろうか。ただ、技巧に走るリンドベルイの演奏ではやや落ち着きの悪い感じもある。

 シルクレットの名を知ったのは、小学校の頃、我が家の納屋から出てきたSP盤群の中にあった日本ビクターの包装紙に印刷されていた宣伝だった。関屋敏子という日本の戦前のソプラノ歌手のレコードの宣伝でその句に「シルクレット氏指揮米国ビクター・サロン管弦団伴奏による」とあった。シルクレットという指揮者がいるのだなという認識はここからだった。曲目はシューベルトの「セレナード」とビショップの「見よ優しき雲雀を」だったかと思う。これらはいずれも復刻CDで入手した。ただしそのCDには指揮者の名前が載っていないが、この宣伝からシルクレットの指揮であると確信している。検索してみるとこの小アンサンブルのメンバーとともに写った写真も見た。 

 今はその本家本元の演奏がどんなものかを楽しみにしている。





演奏:マーティン・ブラビンス指揮 BBC交響楽団
 
>ルーマニア出身、イギリスの作曲家、フランシス・シャグラン(1905-1972)。一時期はフランスの音楽院でポール・デュカスとナディア・ブーランジェに師事、その時にアレクサンドル・パウッケルという本名を、深い悲しみ、悔しさなどの意味を持つ"chagrin"に改めたと言う。そんなシャグランの2曲の交響曲は、彼が手掛けていた映画音楽にも似た重厚で骨太な音楽。シャグランの苦悩が映し出されたその音の波に、聴き手までもが飲み込まれていくよう。音楽がいつも人の心を癒すとは限らないということを実感させてくれる1枚。BBC交響楽団/マルティン・ブラビンズによる2014年録音。 (C)RS~帯解説から~
 
 これを見つけた時、この未知の曲をブラビンスが指揮するBBC交響楽団が演奏しているということに惹かれた。このレーベルに登場する実態のよくわからないオケではなく、名前の通ったオケだということに信頼を寄せてのもの。
 
 先日、Eテレで放映された大阪交響楽団の常任の児玉宏氏は未知の作品を取り上げるので有名だった。その彼が云うのは好奇心ありますか、という問いかけだ。まさにいいこと云ってくれたと思った。自分がこうした未知の作品を聴こうというのはこの好奇心以外の何物でもない。最近はネットでこうしたことを探すという手があろうが、コンサートへ行ったり、CDを購入して身銭を切って接しないと、真剣になれないところが自分にはあるように思う。

【曲目】
1 オープニング・テーマ

SOS原子旅客機・組曲
2 フッドとファイアーフラッシュ号
3 ファイアーフラッシュ号着陸
4 ペネロープ号の追跡
5 トレーシー・ラウンジ・ピアノ

6 サンダーバード・マーチ
7 ロケット太陽号の危機
8 火星ロケット輸送車

ニューヨークの恐怖・組曲
9 独占スクープ失敗
10 エンパイア・ステート・ビルの移動
11 ネッドの救出

12 サンダーバード6号
13 トレーシー島
14 ゼロX号のテーマ
15 スポーク・シティ・ジャズ

ジェットモグラ号の活躍・組曲
16 サイドワインダーの命運
17 危険な穴
18 救助!

19 イージーリスニング・ラジオ・ミュージック

死の谷・組曲
20 東南アジア道路でのドラマ
21 絶望的な挑戦
22 救助に向かうサンダーバード

23 エンディング・テーマ
24 日本版「サンダーバード」主題歌

【演奏】
指揮:広上 淳一
演奏:東京ガーデン・オーケストラ
歌:IL DEVUメンバー, TOKYO-FM少年合唱団(24)

【録音】
2015年12月28日 杉並公会堂
 
 オリジナル・スコアによるという惹句に惹かれた形だ。こういう映像のための付随音楽は用が済むと処分されてしまうことが多い。それは主に著作権絡みもあるからという。だから、そのスコアを誰かが保管していたというのは幸運としか言えない。
 
 実際聴いてみると、画面から流れていた響きとは若干相違があるように感じた。解説を読むと楽器を倍にしたり補強したとある。原因はこれであろう。映画も予算があって、多くの楽員でやれないという事情もあって、仕方がない面もあったろうと思う。ここに収められている音楽は割とまとまった構成の楽曲ばかりである。伊福部昭が自作の怪獣映画のため音楽にファンタジーという言葉を使って発展しない断片的なものということを語っていたが、やはりそういった傾向はある。
 
 作曲者のバリー・グレイは1908年生まれのイギリスの作曲家という。世代的にはウォルトンやティペットらより少し若い。国は異なるが隣国フランスのメシアンと同い年になる。純粋なクラシックというよりもジャズの要素なども取り入れたポピュラー音楽に接近したスタンスとでも言ったら良いか。しかし、和音などの扱いはブリテンなんかのそれに似たようなことがあって、イギリス音楽の伝統に沿ったものなのかなと思ったりする。
 
 オーケストラは首都圏の音楽大学の学生が集合した団体だそうで、若いプロの卵の集団のようだ。彼らはこの人形劇を直接は知らないのかもしれない。

【収録情報】
● ロッシーニ:歌劇『泥棒かささぎ』全曲
ファブリッツィオ(豪農)/カルロス・フェレール(バス)
ジャンネット(ファブリッツィオの息子)/デイヴィッド・キューブラー(テノール)
ルチーア(ファブリッツィオの妻)/ヌッチ・コンドー(メゾ・ソプラノ)
ジャンネット(ファブリッツィオの息子)/デイヴィッド・キューブラー(テノール)
ニネッタ/イレアナ・コトルバス(ソプラノ)
フェルナンド(ニネッタの父親)/ブレント・エリス(バス)
代官/アルベルト・リナルディ(バス)
ピッポ(若い農夫)/エレーナ・ツィーリオ(メゾ・ソプラノ)
イザッコ/アーリンガー・ヴィグフッソン(テノール)
アントニオ/エーベルハルト・カッツ(テノール)
ジョルジョ/クラウス・ブルッフ(バス)
エルネスト/ウルリヒ・ヒールシャー(バス)
裁判官/フランシスコ・ヴェルガーラ(バス)
ブルーノ・バルトレッティ指揮 ケルン・ギュルニェニヒ管弦楽団 ケルン・オペラ合唱団
演出:ミヒャエル・ハンペ 装置・衣裳:マウロ・パガーノ 照明:ハンス・テルシュテーデ
収録時期:1987年   収録場所:ケルン歌劇場(ライヴ)

 こういう映像があったとは知らなかった。LDも発売されていたというが、それすら覚えていない有様である。この公演のポイントはコトルバスの出演とバルトレッティの指揮かもしれない。

 前にも書いたかもしれないが、かつてはドタバタ喜劇かと思っていたら、意外と深刻な話で原作は悲劇とある。当時フランスあたりで流行った救出劇の形を取っているという。真犯人がかささぎというのが人を喰った設定ではる。結局悪代官の横恋慕があって、勝手に罪状作って女を自分のものにしようという魂胆というのがこのオペラの筋の中心。しかし、かささぎが物をとっているというのは少々あり得ないような話だ。

 これも英語字幕での鑑賞ではあるが、何といっても演出がオーソドックス。変に才気走ることもない。ただし1987年の映像だから、多少画質の鮮度は落ちる。これは仕方がない。





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