2016年07月


①フランス組曲

②ピアノ協奏曲第1番作品127                  マルグリット・ロン(Pf

③春のコンチェルティーノ~ヴァイオリンと室内管弦楽のための~   ルイス・カウフマン(V

④ヴァイオリン協奏曲第2番 作品263               ルイス・カウフマン(V

⑤スクラムーシュ~2台のピアノのための組曲~          フィリス・シェリック&シリル・スミス(Pf

⑥春のコンチェルティーノ~ヴァイオリンと室内管弦楽のための~  イヴォンヌ・アストルー(V

ダリウス・ミヨー指揮①ニューヨーク・フィルハーモニック ②フランス国立管弦楽団③④フランス国立放送局管弦楽団員⑥管弦楽団


 ダットンというイギリスのレーベルから出た比較的古い録音のアルバム。管弦楽を伴った作品は全て作曲者自身の指揮によるものだ。

 最初の曲はオリジナルは吹奏楽曲。既に東京佼成ウィンド・オーケストラによるオリジナル版は手許にあるが、これは管弦楽に編曲されたもの。演奏はNYPでどうやらCBSに入れたセッション録音のようである。春のコンチェルティーノというのが二つあるが、一つはカウフマンというアメリカの奏者がパリデビューした頃もので、もう一つはこの曲を依頼した奏者のもの。

 どちらかというと軽い感じの作品が多く、当時の流行の音楽を取り入れたもので親しみやすい。ただし、ここに集められた録音は1933年から49年に渡って録音されたもので、音質はいささか心もとない。かつてクラウン・レコードか発売されたBBCラジオというシリーズにこの人の自作自演があるので、これはやや屋上に屋を架す結果になってしまった。


ミヒャエル・ギーレン指揮 南西ドイツ放送交響楽団 
コレネリア・カリッシュ(MS)、ジークフリート・イェルザレム(T)
録音時期:1992年11月(Ⅰ・Ⅲ・Ⅴ)、2002年11月(Ⅱ・Ⅳ・Ⅵ)
録音場所:ハンス・ロスバウト・スタジオ(Ⅰ・Ⅲ・Ⅴ)、フライブルク・コンツェルトハウス(Ⅱ・Ⅳ・Ⅵ)
録音方式:デジタル

マーラー『大地の歌』の注目盤!
ギーレン&SWR交響楽団

すでに交響曲全集を完成していながらなぜか『大地の歌』のリリースがまだだったギーレンのマーラー・シリーズですが、今回ようやく男声楽章を1992年、女声楽章を2002年に録音して制作されたアルバムが登場します。録音年代が10年も開いてしまった理由は明らかにされていませんが、ギーレンが納得した結果としてこうした形が採られたのは確かなようです。なお、ギーレン&SWR響の顔合わせでは、2011年9月に、クリスティアーネ・イヴェンとハンノ・ミュラー=ブラッハマンとをソリストに迎えた、歌曲集『子供の不思議な角笛』のリリースも予定されています。

【ギーレンのマーラー】
近・現代音楽の大御所としてファンの熱烈な支持を受ける巨匠、ミヒャエル・ギーレンによる待望の『大地の歌』の登場。ギーレンはすでにマーラーの交響曲全集を完成させていますが、そこでの演奏は、細部まで見通しのよい堅牢な造形、緊密に練り上げられたテクスチュア構築など膨大な情報処理に秀でている点が特徴的で、素材間の緊張関係や声部の重なり合いの面白さには実に見事。オーケストラの楽器配置が第2ヴァイオリン右側の両翼型である点も見逃せない重要な基本要素で、マーラーが意図したであろう音響パースペクティヴの中に各素材が配されることによって生ずる響きや動きの妙味に説得力があり、多用される「対位法」や、「素材引用」への聴き手の関心が無理なく高められるのも嬉しいポイントでした。
今回の『大地の歌』も、これまでの演奏の基本姿勢と同様、情緒過多やペシミズム偏向に陥ることなく、作品本来の複雑な味わいに富む魅力を明らかにしてくれるものと思われます。

【ソリストについて】
ソリストにはマーラー経験の豊富なドイツの二人の歌手が起用されています。
テノールは、ヘルデンテノールとして有名でワーグナーやシュトラウスを得意とするジークフリート・イェルザレムが担当。イェルザレムは『大地の歌』を、バレンボイム指揮シカゴ響(1991)、レヴァイン指揮ベルリン・フィル(1992)とも録音しています。
メゾソプラノは、近現代を中心に、ロマン派、古典派、古楽までこなすコルネリア・カリッシュが受け持っています。ギーレンによるマーラー・シリーズでは、第2番(1996)、第3番(1997)のレコーディングにも参加しており、さらに『亡き子を偲ぶ歌』(1998)でも情感豊かで美しい歌唱を聴かせていました。

http://img.hmv.co.jp/news/image/10/0401/news-0090.jpg【大地の歌】
壮大壮麗な『千人の交響曲』を完成させたマーラーが次に向かったのは、前作とはまったく異なる「異国趣味」の世界でした。
きっかけは友人から贈られた一冊の詩集『中国の笛』。これはハンス・ベートゲが、ハンス・ハイルマンによるドイツ語訳『中国叙情詩集』から選んだ詩を編みなおしたドイツ語詩集で、そのハイルマンの『中国叙情詩集』そのものも、フランス語や英語に訳された漢詩が元ネタになっているものもあるという具合でした。
さらに、ベートゲはそれらの漢詩の一部の「情景」を「人間」に置き換えるなどヨーロッパ的なわかりやすいドラマ性を持ち込んだりし、さらにマーラーはそういった複数の詩をつないでしまったり、最後には自分のテキストを追加したりした結果、元来の包括的な陰陽二元論的世界は、西欧的でシンプルな二元論の世界へと読み替えられ、原詩の世界とは遠くかけ離れてしまった面もあるようです。
もっとも、当時の欧州で流行をみせていたシノワズリーやジャポニズムといったオリエンタリズムそのものが、概して対象とした文化の表層のみを模倣し、それをヨーロッパ的な嗜好で換骨奪胎したうえで受容し、楽しんでいたものであったことを考えれば、『大地の歌』に取り込まれた「中国の詩」「中国風な詩」「中国風な旋律やリズム」といった諸要素も、様々な「引用」をおこなってきたマーラーにとっては、作品創造のいちプロセスに過ぎなかったのかもしれません。
しかし、実際のところ、この作品から感じられる東洋・西洋ないまぜになった独特の雰囲気、日常性の中に穏やかな達観が織り込まれたテキストの魅力にはやはり抗いがたいものがあり、マーラーとしてもその魅力をなんとか自身の音楽に盛り込みたかったのではないでしょうか。
ともかく、この歌曲とも交響曲ともつかないマーラーの『大地の歌』が書かれたとき、まだマーラーは40代であり、メトロポリタン・オペラにも招かれ、翌年にはニューヨーク・フィルの指揮者となることも決まっており、新天地への期待に胸がふくらんでいる時期でもあったのです。(HMV)

 このアルバムは面白いことにテノール歌唱の奇数楽章とメゾ・ソプラノ歌唱の偶数楽章の録音が10年の時を隔てて実施されている。指揮者の意図なのか、単純な演奏者の予定によってこうなったのかはわからない。この作品は別々に収録されるのだが、10年も間があるのは少し驚いた。これは販売者コメントにも触れられているが、ギーレンの方針が大いに関与していることでろう。

 先日聴いたブルックナーが割といい感じであり、既にBPOを振ったマーラーの第7番も聴いている。ブルックナーのアルバムにマーラーの宣伝が掲載されていたので、まんまとメーカーの「計略」にひっかかってしまった。既に全集も発注済みでその全集にない本作品や第10番のクック版も入手してしまった。

 ギーレンというと現代作品の大家というイメージが強いのだが、こうしてマーラーもブルックナーもいい解釈を披露してくれるし、古典派や初期ロマン派もレパートリーで持っている。別に奇を衒った解釈はしない。極めてオーソドックスで、この曲を知るきっかけになったワルターの解釈やテンポに似ているように聴こえる。テンポはワルターよりも若干遅いのかもしれない。まあ、好みのテンポではある。ソリストはいずれもマーラー経験豊富なドイツの歌手だから、安心して聴ける。イェルザレムはレヴァイン/METの「指輪」で知った人だ。

 ギーレンは1927年にドレスデンで生まれた人だから、ブロムシュテットと同い年で現役最古参の一人ではなかろうか。
 

ミヒャエル・ギーレン・エディション 第2集(1968-2013) ブルックナー:交響曲 第1番‐第9番[10CDs,Boxset]
①交響曲第1番ハ短調(ウィーン版)            2009.1.25,29
②交響曲第2番ハ長調(ハース版)                            1968.3.14,15.
③交響曲第3番ニ短調「ワーグナー」(エーザー版)      1999.5.3-5
④交響曲第4番変ホ長調「ロマンティック」(初稿版)      1994.4.12-15
⑤交響曲第5番変ロ長調(原典版)                            1988.12.8-12;1989.11.9-11
⑥交響曲第6番イ長調(原典版)                                2001.3.29
⑦交響曲第7番ホ長調(原典版)                                1986.12.15,16
⑧交響曲第8番ハ短調(初稿版)                                2007.6.2
⑨交響曲第9番ニ短調(原典版)                                2013.12.20
ミヒャエル・ギーレン指揮 ①③~⑨南西ドイツ放送交響楽団②ザールブリュッケン放送交響楽団

 放送局の音源から取られたギーレンのブルックナー交響曲全集。1968年から2013年に渡る45年間の記録である。第2番以外の全ての演奏を担当している楽団はバーデンバーデン&フライブルクという地名がついているが、シュトゥットガルトのオケと合併されるとかで、本場でもリストラが断行されているようだ。このオケには日本の女性トロンボーン奏者の清水真弓さんという人が首席で在籍しているはずだが、どうも彼女が就任する前のようで、この録音には参加していない可能性が高い。合併となるとこの人もどうなるのでろうか。

 さて、肝心の中身だが、たいへんユニークな全集だ。版は曲によってまちまちで初稿版まである。ことに第4番は普段聴きなれている音楽とかなり異なる。特に後半の2つの楽章は同じ素材はあるものの別物である。ティントナーやインバルの録音で聴けるが、この全集に含まれているとは思わなかった。第8番も初稿版で違うところが多々ある。しかもギーレンはこの曲の第2楽章のスケルツォが極端に遅いときている。他の曲は割と淡々と進行するのにこれだけは様子が違う。また第3番もクーベリックが取り上げたエーザー版のようだ。初稿になるとワーグナーのオペラから引用が多くて冗長な感じがするが、この版は一番バランスがいい。ノヴァーク版だとあっけない楽章があったりするが、これはそういう不満はない。考え抜いて版を選択しているようで面白い。

 ただ、これをずっと聴き通すのはかなり骨が折れる。やはりどこかブルックナーは苦手意識があるようだ。

監督:ゲオルク・ヴュボルト
プロデューサー:ベルンハルト・フライシャー

>20世紀を代表する偉大な音楽家レナード・バーンスタインのドキュメンタリー映像。彼は指揮者、作曲者、そして教育者としても大きな業績を残したまさに万能の人物。このドキュメンタリーは、バーンスタインの幼少期時代のエピソードを交え、音楽家としてのストイックな姿勢、音楽だけでなく膨大な芸術に関する知識、タングルウッド、マーラー、ウェストサイド・ストーリー、札幌の夏の風物詩となったPMFなどバーンスタインとは切っても切り離せない話題、そして共演者ら周囲に対してオープンマインドに接する様子や彼の子供たちジェイミー、アレクサンダー、ニーナが語る父親としての顔など、様々な角度からバーンスタインという人間を掘り下げた内容です。インタビュー映像には、バーンスタインの情熱を引き継いだ指揮者グスターヴォ・ドゥダメル、ケント・ナガノ、マリン・オールソップ、クリストフ・エッシェンバッハ、作曲家のスティーヴン・ソンドハイム、世界的に有名なインテンダントのサー・ピーター・ジョナス、イギリスの音楽評論家ノーマン・レブレヒト、など多数の関係者が興味深い話を語っています。音楽家バーンスタインが我々に残した遺産の大きさを改めて感じるドキュメンタリーとなっています。
キングインターナショナル

 カルロス・クライバーのドキュメンタリーにつづいて、今度はバーンスタインの記録映画だ。こういう大スターでも大いに悩んだとわかる。72年間懸命に走って過ぎた人生といったらよかろうか。聖書や「ファウスト」なんかが完璧に頭に入っていたというし、言語もドイツ語、イタリア語、ロシア語だけでなくヘブライ語まで堪能だったのは初めて知った。

 でも老化には勝てず、日本でのリハーサルではいまいましい老化と叫ぶあたりは、痛々しい。ウィーン・フィルとマーラーのリハーサルする時に楽員に苦言を云うところは緊張感もあった。たえず人と会ってないと不安になるというのも何だか哀れに思える。自作のミュージカルが当たってもミュージカル作家とみなされたくないという複雑な心情など興味津々であった。

【曲目】
CD1
1.ドヴォルザーク:チェロ協奏曲ロ短調 Op.104
2. サン=サーンス:チェロ協奏曲第1番イ短調 Op.33
3.チャイコフスキー:ロココの主題による変奏曲 Op.33
CD2
4. ベートーヴェン:チェロ・ソナタ第5番ニ長調 Op.102-2
5. ベートーヴェン:チェロ・ソナタ第3番イ長調 Op.69、ブラームス:チェロ・ソナタ第1番ホ短調 Op.38、
ベートーヴェン:チェロ・ソナタ第3番イ長調 Op.69より第3楽章(アンコール)

【演奏】
レナード・ローズ(チェロ)
1.シャルル・デュトワ(指揮) フランス国立放送管弦楽団/録音:1967年12月6日(ライヴ)/シャンゼリゼ劇場
2.ルイ・ド・フロマン(指揮) ルクセンブルク放送交響楽団/録音:1961年11月15日(ライヴ)/ルクセンブルク・ラジオスタジオ
3.ルイ・ド・フロマン(指揮) ルクセンブルク放送交響楽団/録音:1961年11月17日(ライヴ)/ルクセンブルク・ラジオスタジオ
4.ユージン・イストミン(ピアノ)/録音:1969年(ライヴ)/カナダ、スタンフォード・サマー・フェスティバル
5.ナディア・ライセンバーグ(ピアノ)/録音:1973年1月(ライヴ)/ニューヨーク、WQXRラジオスタジオ

>若くしてNBC交響楽団、クリーヴランド管弦楽団、ニューヨーク・フィルで首席奏者を務め、のちにスターン、イストミンと結成した「スターン・トリオ」や、ソリストとしても大いに活躍したアメリカ合衆国の名チェリスト、レナード・ローズ(1918-1984)による、放送用音源を含むライヴ録音集です。協奏曲と室内楽曲を収めた2枚組。聴きごたえのある大曲ばかりで、どれも初出となります。
キングインターナショナル

 この人は、「Young People's Concert」でNYPの第2席及び首席として座っていた姿を思い出す。ことにブラジル風バッハ第5番でマーニ・ニクソンのバックでソロしていたのが印象に残っている。しかし、オケを離れてこのようなソロ活動の記録は今回初めて接する。どれも放送音源なので、鑑賞に支障はないが、状態は必ずしも良好ではない。

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